自分の気持ちの解像度を徹底的にあげる
2018年7月、東京メトロ国会議事堂前駅と霞ヶ関駅に、突然「黒塗り文書」が掲出された。森友学園問題などで「黒塗り文書」が注目される中で掲出されたこのポスターは、ラッパーのケンドリック・ラマーの来日公演を知らせるもの。広告業界のみならず、SNSでも大きな話題を呼んだこの広告を企画したのが、まだ入社から3ヵ月の新人コピーライター・飯塚政博さんだった。
大学在籍時から博報堂ケトルで3年にわたってインターンとして仕事を経験していた飯塚さん。しかし、大学を2回留年していた彼は、就職活動に全滅してしまう……。その頃、当時博報堂に在籍していた三浦崇宏さんが会社を立ち上げるということを聞き、直談判の末、The Breakthrough Company GOにアルバイトとして加わった。
「当時は会社の立ち上げ期だったこともあり、こまごまとした作業が山ほどあったんです。当時行っていた仕事の7割がそういった作業、あとは三浦のプレゼン資料をつくるサポートでした。そんな中、たまに『企画を出せ』と言われることもあったんです。
博報堂ケトルでは編集のアシスタントをしていたので、記事の企画をすることはあったものの、プロモーションや広告といった領域の企画を立てたことはなかったし、企画について専門的に学んだこともなかった。しかし、ある時に出した企画が三浦に気に入られ、ただの大学6年生である僕がクライアントにプレゼンをすることになりました。そして、企画が通り、ローンチにまで至ったこともありました」
多くの広告代理店で実施される新人向けプランニング研修を経ずに、ほとんど独学で走りながらその方法を身につけてきた飯塚さん。そんな彼が企画を立てるうえでいつも大事にしていることが、「因数分解」の習慣だという。
「僕はいつも、『因数分解』や『解像度』と呼んでいるのですが、広告に限らず、映画やテレビ番組などでも『なぜこの企画は俺にとっておもしろいのか?』を分解し、自分の気持ちの解像度を高めている。すると、自分が企画を考える際にも、お題は違っても構造設計そのものは応用することができます。
この時に気をつけるのが、必ず『自分』を主語にして考えること。そもそも、他人の気持ちなんてぶっちゃけわかりません。それよりも、自分の気持ちの内訳を解像度高く因数分解をしていく方が、はるかに企画を考えるうえで参考になると思うんです」