デザイナーの視点、スキル、カルチャーすべてが組織を動かす――Mutureに聞くデザイン×経営の可能性

デザイナーの視点、スキル、カルチャーすべてが組織を動かす――Mutureに聞くデザイン×経営の可能性
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2023/06/26 08:00

 2022年4月、丸井グループのDXを多方面から推進するために、同社とグッドパッチは合弁会社Muture(ミューチュア)を設立した。5名の経営メンバーのうち、2名はグッドパッチから出向している。それが、UXデザイナーの莇大介さんとUI・BX(ブランド・エクスペリエンス)デザイナーの米永さら沙さんだ。設立以来、Mutureの経営とデザインを牽引してきたふたりに、デザイナーが経営に携わる意義やMutureが向かう先などについて話を聞いた。

立ち上げの背景はDX推進のための“人材”改革

――まず、おふたりのご経歴についてお聞かせください。

 私は長年、制作会社でクリエイティブディレクターやメディアディレクターといった役割を務めたのち、グッドパッチには2019年に入社。UXデザイナーを名乗り、仕事をするようになりました。

グッドパッチでは、大企業からスタートアップまで幅広い案件に携わりました。SaaSの新規事業立ち上げに携わった際には、UXデザイナーの枠を超え、セールスやマーケティング、カスタマーサクセスといった工程すべてを設計することもありました。

米永 最初は広告クリエイティブの制作会社にウェブデザイナーとして入社し、ウェブを中心としたさまざまなデザインに関わっていました。グッドパッチへの転職を機にUIデザインの道にシフトチェンジし、美容系アプリのリニューアルや、SaaSのベータ版立ち上げなどを経験した後、徐々にブランディング領域を担うように。クライアントのインナーブランディングやCIのリニューアル、バリューを社内に浸透させていくためのコミュニケーションデザインなどに携わっていました。

――合弁会社Muture立ち上げの背景や事業の特徴、おふたりの役割などについて教えてください。

米永 始まりは、グッドパッチが丸井グループからプロジェクトの依頼を受けたことです。当時の丸井グループの課題は「DX推進」。人材の性質が小売の文化に偏っており、デジタルに明るい人材が少ない点がひとつの課題でした。ただ、伴走しながらのプロダクト支援というグッドパッチの強みだけでは、丸井グループが本当に叶えたい人材の変革を実現することはできないのではないかといった考えから、グッドパッチ代表の土屋がジョイントベンチャー設立を提案。グッドパッチの持ち味を生かしながらも、Mutureでデザイナーを採用し、丸井グループのカルチャーに依存しない形で自由にドライブさせていく。そんなイメージのもと生まれた会社です。

 Mutureの明確なミッションは、「丸井グループのDX推進」です。アプリケーションやウェブサービスの開発、デザインといった手を動かす作業もありますが、それをMutureのデザイナーがすべて取り仕切って直接デザインすると丸井グループの成長にはつながらない。時間はかかりますが、最終的には彼らがデザイン・開発のパートナーとうまくコラボレーションをし、スピーディーにサービス提供できるようになることを目指して支援しています。そのため、丸井という組織全体をどのように変えればよいのかなど、現場で拾ったイシューを咀嚼しやすい形にし、経営にフィードバックすることも行っています。

とはいえ立ち上げにあたってメンバー間では、「単純な機能子会社の形で入ってもおもしろくないだろう」という意見もあったため、何か芽があればMutureとしての事業も行えるよう、両親会社の役員と丁寧に会話を重ねた記憶もあります。丸井グループとグッドパッチのメンバーが半々という特殊な環境を活かし組織を変えていくことが、大きな使命です。

米永 Mutureで私が担っているのは、経営面では広報や採用、PRの領域です。クライアントワーク側ではUIデザイナーとしてアプリケーションの支援をしており、プロトタイプの文化をはじめ、UIデザインの観点をインストールするようなコミュニケーションをとっています。

 一方私は、昨年4月の立ち上げから半年ほどはUXデザイナーとしてワークを設計したり、チームの教育をしながらプロダクト開発に携わったりしていました。現在は、事業・経営戦略、人材戦略にも関わるようになり、実際に現場で起こっている具体的な課題を抽象的な経営アジェンダとつなぎ合わせる役割も担っています。今後は新規事業の検討なども行っていきたいですね。