“徹底的に”マンガアプリを参考にしたワケ
――BUMPのビジネスモデルはどのように考えていったのですか?
なぜか明確に覚えていないのですが、起業家の友人と話していたときに、マンガアプリをベンチマークにできるとふと気づいたのだと思います。マンガは、もともと単行本で1冊を購入して読んでいたものが、ウェブで一話あたり数十円で読めるようになっており、さらに待つことができれば無料で読むことができます。それに話数がたくさんあることで、しっかり収益化にもつなげられていました。そのようにお客さんがコンテンツに課金しているプラットフォームは強いですし、今も着実に成長を続けています。
さらに調べてみると、今Webtoonが市場として盛り上がっており日本でもスタジオが増えていること、一話あたりの尺感が自分の描くショートドラマの1話のイメージと近かったこと、Webtoonの制作コストが意外と高いことなどがわかりました。その金額感であればビジネスモデルとしてもアプリの形としても、マンガアプリを参考にするのが適切ではないかと思ったんです。
――アプリのUI設計や体験づくりではどのようなことを意識したのでしょうか。
ひとつはマンガアプリを“徹底的に”ベンチマークしたことです。そもそもショートドラマで勝負すること自体が今までにない新しい取り組みです。そのため、難易度を下げるためにほかの部分は成功しているマンガアプリのビジネスモデルをなるべく踏襲したり、体験設計を参考にしたりしながら開発を進めていきました。
もうひとつUIの設計で工夫したのは、再生中の体験です。ショートドラマを観ているときに、その秒数に投稿されたコメントやスタンプが、ほかの視聴者が同じ秒数を視聴したときにも表示される仕様になっています。こうすることで、リアルタイムで一緒に観ているような感覚になることが可能です。
僕は隙間時間の「暇」という感覚は「寂しい」に近いと感じています。家にひとりでいるときなど、その隙間を埋めるためにコンテンツを見ることがあると思うのですが、そんなときに誰かと一緒に見ているような体験を提供できれば、気持ちが満たされたり、ひとりではないんだ、という感覚になれるのではないかと考えました。
ただ当初は、コメント機能に対し実は半信半疑な気持ちもありました。しかしインストールや再生数増加にともない、ユーザーがリアクションしてくれることや、コメントもふくめドラマを楽しんでくれているユーザーが多いこともわかってきた。今の体験設計はライブ配信に近いですが、コンテンツに参加している感覚で、今後は自身の好きな役者さんの気に入ったシーンにギフティングができるような機能も実装していけたらと思っています。