SNSがブランドづくりに適している理由とその意義
続いて三島氏が触れたのは、「ブランド体験におけるSNSコミュニケーションの考えかた」である。そのためのポイントとして挙げたのは、次の3つだ。
「ファンとしての熱狂度を高めたあと、ブランドに対して良い印象を持ってもらう。さらには、困りごとや知りたいことがあったときにはこのブランドだよね、と思い出してもらうこと。この3つが非常に重要です」
ここで三島氏は、「共感」と「期待」について、再びその重要性を強調。それらをつくる方法はさまざまであるとしながらも、大切なのは「1つひとつを丁寧に組み立てていくこと」だと語る。
「コミュニケーションをどれだけ頑張っても良い商品でなければ共感も期待も生まれません。また、どんなにコミュニケーションをとってもUGCとして結果が出なければ、ユーザーがクチコミをしたくなるほど良い体験だとは言えません」
続いて三島氏は、SNS時代における消費行動「PERCARS(パーカーズ)」7つと、そのための具体的なアクションをまとめた図を提示し、「一貫した戦略の軸をつくる際の参考にしてもらえたら」と補足。こういった体験をSNS上でも丁寧に設計し、かつ“わかりやすく”ユーザーに提供することがポイントになると指摘する。
そのうえでコンテンツを設計する場合には、「提供価値」と「ユーザーのインサイト」が交わる部分を見極めることが重要だと言う。
「これらふたつが重なり合っている部分がしっかりとブランドのコンセプトに沿っているかどうかが非常に大切です。言っていることと行動が異なるブランドに、共感や信頼、期待は生まれません」
たとえば化粧品ブランドであれば、最近疲れが肌に出るようになったというインサイトに、どういったコンテンツを用意するのかを1つひとつ丁寧に設計していくことがポイントだ。その際にオススメの手法は、「コンテンツカテゴリ」、「伝える手法」、「インサイト」の3つを掛け合わせることだ。
「この設計がおざなりになっていたり意図が明確でなかったりすると、ユーザーにとってわかりづらいコンテンツになってしまいます。さらに、自分たちが伝えたい内容とユーザーの知りたいことがマッチしているか。これも見定めていかなければなりません。
そして、商品を認知するところから購入後までを含めた一連のプロセスに含まれているユーザーの『共感』や『期待』こそ、ブランドを理解してもらう大きなポイント。そのなかでいかにブランドを自分ごと化してもらうか。『!』と『?』をつくることができるどうかが、コミュニケーションのカギだと考えています」
驚きや感動、学び、また「なぜこれはこうなっているのだろう」と興味をかきたてる疑問。こういった「!」や「?」をつくることが、ユーザーとのコミュニケーションを深めるコツだと三島氏は指摘する。
たとえばチョコレート菓子の「ブラックサンダー」は、SNSのフォロワーとは別に「ブラックサンダー 黒い広報室」という登録制のコミュニティをつくることで、自分たちもブランドの一部であるという帰属意識や期待を醸成している。さらに、そこから発生したファン同士のコミュニケーションが共感を生み、それがブランドのコアになっているのではないかと分析。SNSがブランドづくりに適した場所であることの好例でもあろう。
「SNSにはユーザーのニーズが点在しているので、それらを集め、カスタマージャーニーに沿ったアプローチ、コミュニケーション、コンテンツを継続的につくり続けることができます」
そのうえで、愛され選ばれ続けるブランドをつくるために欠かせない要素を最後に提示し、セッションを締めくくった。
「大切なのは、私たちのブランドは何者で、どういった部分で共感と期待を得ることができるのかをしっかり設計することです。その中でいかにわかりやすくブランドとファンのつながりを強化し、全体のブランド戦略に落とし込むことができるか。さらに、購入の手前から購入後までをイメージした体験を提供し続けることができるか。それがブランドのキーファクターになるのではないでしょうか」