ヤフーのデザイン経営をUX戦略から牽引するUX推進本部とは その背景や実践中の取り組みを本部長に聞く

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2022/09/28 11:00

アクションを宣言し実行する「サービスななめ会議」とは 今後は再現性づくりも

編集部 そんな中UX推進本部では、「サービスななめ会議」もスタートされたそうですね。

町田 もともと「ななめ会議」という人事の施策がありました。私でたとえると、周りのメンバーが私の良い点、悪い点を出しあい、それを受けてどのように改善していくのかを宣言する取り組みです。

これをサービスに置き換えたものが「サービスななめ会議」です。たとえばYahoo!ニュースを対象に、全社員約7,000人から良い部分と改善点を集め、それに対しYahoo!ニュースの担当者たちは「こう直します」と全社に向けて発表する。現在は月に1サービスのペースで取り組んでおり、今5サービス目を行っているところです。

編集部 サービスななめ会議の成果は見えてきましたか?

町田 それぞれのサービスに対して平均して1,500件ほどのコメントが社内から寄せられています。現在は4サービスの改善が完了したところで、ユーザーの目に触れる成果としては小さいですが、そもそもすぐに劇的な数字の変化につながることはないんですよね。「ここが直ったら良いのにな」と思っていたことがじわじわと改善されていくイメージでしょうか。

その好例が、「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」で注文する際の内容確認画面です。以前はストアやサービスからのメールマガジンはデフォルトで受け取る設定になっていたのですが、やめてほしいという意見が社内からもたくさん挙がっていました。サービス側もずっと理解はしていたけれど、優先度が上がらなかった課題だったんです。それがサービスななめ会議を通して一気にプライオリティが上がり、改善につながりました。

出典:プレスリリース
出典:プレスリリース

編集部 社内からの意見は、ユーザーの声をもとにした改善とは別の効果がありそうですね。

町田 ユーザーの意見を受けた改善ももちろん行いますが、サービスななめ会議のポイントは仕組み化されているからこそやらざるを得ない点、つまり「社員から集めた意見に対して改善のアクションを宣言する」ことに意義があると思います。ユーザーの意見と社内の声が合わさり、一気に改善を推進できます。

編集部 実際に意見をもらうサービス側のメンバーは、どのような反応ですか?

町田 すごく良いですよ。というのも、サービスななめ会議は、そのサービスの課題だけではなく、良い部分と応援コメントも受け取ることができます。そのため作り手も励みになるんですよね。自分たちが頑張って作ってきたものを褒めてもらうことは、社内であっても非常に嬉しいです。

編集部 サービスをまたいで意見を交換することで、社内のUXに対する意識も変わっていきそうですね。

町田 実はそこも狙いだったりします。もともとフィードバックをしあおうという意識づけはあったのですが、仕組み化されたことでよりはかどっている印象です。

編集部 最後に、より良いサービスのためにUX推進本部で取り組んでいきたいことや目標についてお聞かせください。

町田 UXに限らずヤフー全体でフレームワーク化することが重要だと考えています。良いアイディアを考えることができる人たちの思考プロセスを抽出し、再現性をつくっていきたい。それが可能になれば、人の経験に頼らずどんどん良いものを生むことができるはずです。

編集部 デザインは属人化しがちな面もあると思いますが、こうやって仕組み化されていると、社員の皆さんも安心してUXに携わることができそうです。

町田 それはまさにCEOの小澤も言っていることです。「私じゃないとダメだという世界はダメだ」と。人が変わっても良いサービスを提供し続けることができる会社にしていきたいと思っています。

編集部 町田さん、ありがとうございました!