【ショートドラマ制作の裏側】テレビドラマとどう違う? 両方を経験したプロデューサーが語るヒットの秘訣

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2024/10/18 08:00

ヒットコンテンツ3つの特徴とおさえるべき日本人ならではの特性

――課金型ショートドラマ市場のトレンドについて教えてください。

ここ半年~1年ぐらい続いているのは、「不倫復讐」というテーマですね。Mintoでも初期の7本はそのジャンルを強化していました。

それ以外で言うと、海外でトレンドになったものを上手く日本化して取り入れていくフェーズだと感じています。たとえば中国では、素性の知らない人物がひどい目に遭うけれど、実はその人物が権力者で逆転劇を引き起こす「正体隠し」というジャンルがあります。日本では『水戸黄門』がイメージに近いでしょうか。ただ、中国のフレームをそのまま日本に持ってきても、おそらくヒットさせるのは難しい。

日本では道理に反した権力者などが成敗される構図のほうが人気があります。たとえば『半沢直樹』で描かれた、私欲にまみれた権力者を成敗する主人公が好例です。中国のように立場や地位の違いから生まれる無礼や厚顔を描くのではなく、日本人の視点では筋が通っていない権力者への反逆を求められているのではないでしょうか。

さまざまなSNSのコメント欄を見ていても思うのですが、日本人はある悪い行いを目撃したときに、それ相応の事情があれば多少は許容できるものの、「筋の通ってなさ」がある一定ラインを超えると一気に攻撃性が強くなる。これは国民性なのかもしれません。そういった日本人がもちやすい感情を上手くくすぐっていくことが必要なのではないかと考えています。

そんな課金型ショートドラマにおいて、ヒットしているコンテンツには3つの共通点があると思います。

ひとつは、俳優さんの知名度に関わらず、ストーリーにぴったりなキャラクターを演じられる方をキャスティングしていること。ふたつめは、ストーリー展開に対する期待値が高いこと。切り抜きの段階で「こんな展開なら観てみたい」と思わせることができる物語が強いですね。3つめは、勧善懲悪であること。そういった構図がしっかりと伝わる作品は、どのジャンルでも反響を呼んでいる印象です。

――最後に、今後の展望を教えてください。

僕が目指したいと思っているのはジャンルの拡張です。現在は出資元も制作者側も、ヒットする可能性が高いコンテンツへの投資が集中しています。ですがそれだけでは停滞してしまうので、誰かが少しずつずらしながらジャンルを拡張していく必要がある。それをMintoとしても取り組んでいくべきだと感じています。

ジャンルが増えるほど、視聴者の期待値も上がってくるでしょうし、これはショートドラマの存続にも関わってくる部分。「不倫復讐」のテーマももちろんおもしろいですが、より多くのジャンル作品を楽しむことができるようになったほうが、未来は明るいと思っています。

駒場さんがプロデュースした作品『愛の炎罪~人気ママタレの裏の顔は不倫モンスターでした。~』の一部
駒場さんがプロデュースした作品『愛の炎罪~人気ママタレの裏の顔は不倫モンスターでした。~』の一部

また、さまざまなクリエイターが参入ししっかり稼ぎの場所になるなど、作り手が元気になる業界にもしていきたいですね。ショートドラマ市場は今バブルの状態でたくさんの仕事がありますが、この状態が長く続くように取り組んでいかなければなりません。そのためにも、しっかりと儲けることができるし、視聴者からたくさんの反応が届く作品をつくれる環境を整え、少しでも多くのクリエイターが長くショートドラマに携わる意味を見出せるようにしていけたらと思っています。

――ありがとうございました!