事例から考える ウィズコロナにおける広告のクリエイティブ表現とは

事例から考える ウィズコロナにおける広告のクリエイティブ表現とは
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 面白いアイディアがあるのになかなか実現まで至らない。斬新な企画を世の中に打ち出したいけれど何から始めたらいいかわからない。そんな風に考えるクリエイター、マーケターの方に向け、本連載では「面白いアイディア」を実現するためのヒントをお伝えしていきます。第7回は、番外編として、ウィズコロナにおける広告のクリエイティブ表現をテーマにお届けします。

新たに気づいた3つの視点

 「面白いアイディアを実現するための方法」をテーマに進めてきた本連載ですが、企画フェーズ、実現フェーズときて、いよいよ公開フェーズに入ろうと思っていた時期に、コロナ禍によって日常が激変する事態となりました。広告のクリエイティブ表現を扱っている私たちにとっても、その影響は甚大です。

 予定されていたプロモーションや撮影が延期になったり、メッセージや内容を改変する必要が生じたり、イベントがキャンセルになったり。ようやく、新しい日常として手探りながらさまざまな発信が再開される兆しはあるものの、コロナ前とは、企画やメッセージの中身を根本的に見直す必要がでてきたように思います。

 現時点では、まだアフターコロナではなくウィズコロナの中にあります。想像よりも早く収束することを心から望んでいますが、おそらくこの状況はまだしばらく続くだろうと感じています。

 そんななかで考えていたのは、このような状況下では、広告コミュニケーションや表現の果たすべき役割の再定義が求められているのではないか、ということです。私自身も、新しい日常に目線を合わせた表現のありかたを模索しているところではありますが、今回は最近手がけた事例の中から、気づきのあったキーワードを紹介しようと思います。

1.寄り添う視点

広告コミュニケーションにおいては、「誰を喜ばせるのか」が明確になっていないと、思うような反響を得ることができません。つまり、伝えたい相手の共感性という視点は欠かせないものです。ウィズコロナの日常では、従来の広告視点でのターゲットの洞察に加えて、もう一歩踏み込んだ形での「寄り添う視点」が必要なのではないかと感じています。

その例としてご紹介するのが、西友の取り組みです。ステイホームが呼びかけられている中で、スーパーマーケットの混雑が一部で問題となっていたことを受け、店内でのソーシャルディスタンスや、ピークの時間帯を避けた来店を呼びかけるための動画を制作しました。

 

「西友 - 毎日の暮らしを支えるために、私たちにできること。」特設サイト
「西友 - 毎日の暮らしを支えるために、私たちにできること。」特設サイト

このメッセージは、地域のライフラインでもあるスーパーの店頭で、感染リスクへの不安もありながらも働くスタッフの方たちへの「寄り添う視点」が中心にあります。この動画のコメント欄に集まった反響の多くが、日常を支えるために頑張る姿への感謝や応援、共感でした。

いつもは気にも留めないような当たり前のことでも、それは誰かの努力や支えによって成り立っていることを改めて可視化することが、このコミュニケーションが果たすべき役割であったと感じています。

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