前例のない道を進む 銀行らしさからの脱却を目指す「みんなの銀行」が語る、アプリ開発の裏側とは

前例のない道を進む 銀行らしさからの脱却を目指す「みんなの銀行」が語る、アプリ開発の裏側とは
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2021/07/16 12:30

 2021年5月にサービス提供を開始した「みんなの銀行」。デジタルネイティブな発想でゼロから設計されたデジタルバンクで、すべてのサービスがスマートフォン上で完結することが大きな特徴だ。今回話を聞いたのは、サービス開始と同時に公開された、みんなの銀行のスマートフォン専用アプリについて。みんなの銀行でデザイングループのリーダーをつとめる中村隆俊さん、みんなの銀行と同じくふくおかフィナンシャルグループのシステム開発子会社、ゼロバンク・デザインファクトリーでCPOをつとめる濵津誠さん、同社のソフトウェアエンジニアである豊島慎志さんの3人が語った、アプリ開発のプロセスとその裏側にあったこだわりとは。

抜本的かつ振り切ったサービスを みんなの銀行の始まりを振り返る

――まずは皆さんのご経歴から教えていただけますか?

中村 前職はIT企業でインハウスデザイナーとしてウェブアプリケーションの制作やサービス設計に携わっていました。みんなの銀行には2019年に入社。現在は6名が所属するデザイングループでデザインのマネジメントおよびディレクションを行っています。

今回のアプリ開発ではアクセンチュアから参加しているデザイナー5名をふくめ、マネジメント業務を中心に、アプリケーションの改善対応、新規サービスの体験設計およびUI設計、ブランディング、コミュニケーション部分のディレクションを担っています。

濵津 新卒で大手通信事業会社に入社しました。赤外線通信を使った電話帳交換に始まり、その後はSSL機能をブラウザに追加したり、コンテンツの不正利用抑止に取り組んだり、そのときどきに必要なアプリケーション開発を担当していました。2006年からしばらくはドイツの研究所でセキュリティ技術の研究などを行い、Androidの日本上陸に合わせて帰国しふたたびアプリケーション開発に従事。大手通信事業会社を退職したあとはベンチャーを経て、現在はゼロバンク・デザインファクトリーでCPOをしています。

ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社 CPO 濵津誠さん
ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社 CPO 濵津誠さん

現在リリース済みのみんなの銀行アプリでは、銀行の預金の取り扱いやさまざまな金融機関での明細をまとめて表示する機能「レコード」の開発を担当しました。本プロジェクトではフィーチャーごとにスクラムチームを分けて開発をしているので、ゼロバンク・デザインファクトリーの内製チームで対応する部分のディレクションという形でアプリ開発には関わっています。

豊島 新卒で大手ERPベンダーに入社し、SCMの製品開発を行う部署に配属になりました。アプリケーション全般の開発を担当し、そのあとはDevOpsを担う新規立ち上げの部署に異動。CICDの改善に注力していました。

その次はMicrosoft Azureを専業とするクラウドインテグレーターに転職し、金融機関向けにマイクロサービスアーキテクチャで構成するインターネットバンキングの開発に参画していました。そこでは主にバックエンドの実装、CICDの構築を担当。スクラッチ開発だったためリードアーキテクトのかたわら、アーキテクチャ検討フェーズから関わっていました。海外の優秀な人たちとスクラムを組んで仕事をする機会も多く、とても刺激的な環境でしたね。その経験を活かし現在は、APIなどバックエンドの開発が7~8割とフロントエンドの部分にも関わっています。

――では、みんなの銀行のコンセプトや特徴について教えてください。

中村 我々はふくおかフィナンシャルグループという九州をおもな営業基盤として展開する広域展開型地域金融グループですが、これから高齢化が進んでいくことをふまえ、未来のお客さまとなるデジタルネイティブ世代に向けた施策をやっていかなければならないステージにあると考えていました。資産そのものも世代をこえて移っていくので、その資産を引き継ぐ若い世代にむけ、抜本的かつ振り切ったサービスを展開する必要がある。そこで、デジタルネイティブ世代と呼ばれる20代から30代をターゲットとした銀行を作ろうというのが始まりです。

その後、独自に若い世代の趣味嗜好をリサーチしました。その結果をふまえ生まれた最初のコンセプトが、「シンプルかつミニマル」。24時間365日即時の口座開設が可能、すべてのサービスがカードレスかつスマートフォン上で完結するなど、デジタルネイティブな発想で生まれた点も大きな特徴です。

みんなの銀行をリリースする際に意識したのは、地銀発のサービスであることを押し出さない点。若い世代に幅広く利用してもらうためには、人口が集中している首都圏をターゲットの中心に据えるべきだと考えたからです。

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