問い合わせにも変化が 企業がメタバースに寄せる期待
――ambrを創業した経緯から教えてください。
もともと前職でも、エンターテインメント系のテクノロジー企業で取締役をしていました。そのころにまだかなり新しかったバーチャルライブを実施したことがあったのですが、そういった体験を通じて今で言う「メタバース」やVRに可能性を感じました。それが大きなきっかけだったと思います。
当時VR×ソーシャルの市場で事業を展開していたのは、国内だとほとんどいなかったのではないかと記憶しています。一方グローバルに目を向けるとVRChatやRec RoomのようなVR SNSのプレイヤーは出てきていた。これは日本から世界に勝負できる企業がなければいけないと思い、2018年にambrを創業。最初の2年弱くらいは、VR SNSを事業の中心に据えていました。
私たちのVR SNSで遊んでくれていたユーザーさんも継続的に応援してくださる方もいましたが、必要となる開発費に対して、収益をあげるまでのスパンが長い。VRChatやRec Roomでも、大きな資本を調達して運営している段階でした。VRが本格的に普及するまでにはまだ時間がかかりそうでしたし、一方で黒字化までが遠いと感じていました。
またコロナ禍となった2020年頃、さまざまな企業さんから「ambrさんと何かできないか?」と問い合わせをいただくことが急増しました。当時の僕らは法人事業を行っていなかったのですがそれでもニーズが多く、自分達が取り組むことで新しい価値や体験を届けることができるような魅力的なプロジェクトもありました。その中で新しい事業として法人向けの事業を展開していくのも良いのではないかと思い、2021年9月に法人向けメタバース構築プロダクト「xambr(クロスアンバー)」の提供を開始しました。
とくに問い合わせが多かったのは、映画館や百貨店、不動産、地域密着型の企業といったリアルの商業施設を持っており、コロナ禍の打撃がとくに大きかった企業さんです。この先どうなるのかわからないからこそ、新しい事業のひとつの可能性としてバーチャルに関心を持っていただいたのではないかと思います。
――コロナ禍となったばかりの2020年と、旧Facebook社の社名変更でさらに注目が集まった2021年を比較して、企業からのニーズに変化はありましたか?
2020年のお問い合わせは、まだ解像度が低い内容が多かった印象です。用途や予算感も当時のマーケット状況とずれているようなものがほとんどだったように思います。その後、さまざまなバーチャルイベントがメディアで取りあげられるなど、イベントを起点にメタバースに注目が集まるようになり理解度も上がってきていると思います。
あとは、業界や業態を問わず「新しい事業としてメタバースに挑戦したいので、まずは話を聞きたい」といった相談が増えたことも変化のひとつ。お金をかけてやってみたいというよりも、調査段階として情報を集めている企業が多い印象です。間口は広がったのかもしれませんね。