嘘がないことが大切な世代 2023年は「等身大」なマインドがトレンドに
――クリエイターとしてZ世代にはどのような特徴がありますか?また、ユーザーとしてZ世代はどのようなコンテンツに惹かれているのでしょうか。
本当にスキルが高いんですよね。映えを意識したり、動画による情報収集を行ったりすることが当たり前だからか、視覚的な見せかたやコミュニケーションに、どのような要素が必要であるかが頭の中にある。たとえば彼らに「エモい写真を作ってきてほしい」と依頼すると、みんな同じような雰囲気の絵を作ってきてくれるんです。テーマに必要な要素に対する共通認識があり、画像から読み取ることができる情報量も多い。かつ、それをアウトプットすることが上手いというのは、クリエイターとしてのZ世代のすごさだと感じています。
自分たちが作り手になることが当たり前だからこそ、コンテンツの見方も変わってきています。有名なクリエイターのインスタライブなどで「この動画は何のアプリで作っているんですか?」「どうやってこの質感を出しているんですか」といった質問がたくさん寄せられたりする。そうやって質問するくらい、コンテンツの作りかたを気にかけているのは、自らをクリエイターとは思っていないものの、常にクリエイターの視点を持っている人が多いのだと思います。
一方、Z世代に向けたコンテンツで大切なことは「嘘がないこと」だと思います。歩きながらスマホで足元を撮るといったシンプルなvlogなどのように、「編集されていなくて嘘がないこと」が彼らにとっての信頼につながります。だからこそ、洗練されたクリエイティブにはリアルさを感じられないためしっくりこない。嘘がないことが、より求められているのだと思います。
また、異質なものが入ってきたことへの違和感を覚えやすい点も特徴でしょう。たとえば、テレビで見るCMであればクオリティが高く作りこまれたものを好む一方、TikTokではリアルなものが見たいし、Instagramだったら映えているものに触れたい。それぞれの性質を理解してSNSを使い分けているからこそ、そこに合っていないものがプラットフォームに流れてきたときの異質さには敏感です。これはZ世代だけに当てはまることではないかもしれませんが、その感覚がより鋭い世代だと感じます。
――2023年、Z世代のトレンドはどのように変わっていくと思いますか?最後に見解をお聞かせください。
Z世代は「フレンチガーリー」「韓国モノトーン」「令和ギャル」など好きな世界観をもっており、たとえば韓国モノトーンであればそれに合ったカフェに行き、自身のSNSのフィードもその界隈に合うトーンにするなど世界観を大切にする世代です。
そんななか2023年に注目を集めそうなのは、英国風カフェなどの「クラシック」なもの、「パンクロック」のような世界観、アメリカの高校生のようなカジュアルでヘルシーな「海外ガール」、地雷系の世界観が派生したサブカルな「水色界隈」といった世界観。今まではアジア風なものがブームでしたが、考えかたとしても「等身大でいたい」「ポジティブなマインドをインストールしたい」といった欧米のカルチャーを受けた流れが生まれてきています。
また2023年は、新たなアプリも話題を集めそうです。本当に仲の良い友だちとつながるための「BeReal.」、中国のトレンドを知るための「小紅書(RED)」などを見ている人も増えてきましたね。またZenlyのサービス終了にともない、どのような位置情報共有アプリが登場するのかにも注目が集まっていますが、これもBeReal.と同様、関係性が深い友だちとのコミュニケーションの文脈。映えも大切ですが、関係値重視のSNSもZ世代で広まっていくのではないかと予想しています。
世の中もあまり良いムードではないけれど、だからこそマインドを上げていきたいという思いから、深いコミュニティでの時間を優先したり、「自分は自分」と思える世界観に入り込んでいきたいという気持ちがあるのではないでしょうか。
――長田さん、ありがとうございました!