[最終回]フェーズごとに考える、クリエイティブディレクターに求められる役割とは

[最終回]フェーズごとに考える、クリエイティブディレクターに求められる役割とは
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 面白いアイディアがあるのになかなか実現まで至らない。斬新な企画を世の中に打ち出したいけれど何から始めたらいいかわからない。そんな風に考えるクリエイター、マーケターの方に向け、本連載では「面白いアイディア」を実現するためのヒントをお伝えしていきます。最終回となる第12回は、「クリエイティブディレクターの役割」をテーマにお届けします。

企画を生む段階で大切なのは「役割や職種に縛られずフラットに考えること」

 「面白いアイディアをどのように生み出し実現させるのか」をテーマにした連載も今回で最終回です。最後にクリエイティブディレクターの役割についてお話ししたいと思います。

 クリエイティブディレクターには、クリエイティブチームの責任者であり管理職、という意味合いもあると思いますが、個人的な解釈としてその役割を端的に言い表すと、「アイディアを生み出し、磨き上げ、実現させることに全責任を負う」ということだと思ってます。各部門のプロフェッショナルが集うチームに目指すべき方向性を示し、自らが先頭に立って実現までの道筋をつける。いわば、サッカーチームの監督のようなイメージでもあります。

 まず、アイディアを生み出すフェーズでは、自分自身が強力なコアアイディア(企画)を主体的に生み出すことに注力します。アイディア出しはチームのメンバーに任せて、その取捨選択やディレクションに徹するスタイルもあると思います。ですが私としては、自分で深く課題を掘り下げて考える経験を重ねておかないと、本当に強いアイディアを生み出し続けることは難しいと感じています。これは、どちらが正しいかいうことではなく、やりかたやスタンスの違いによるものだと思います。

 マーケティングの課題を読み解き、チームメンバーに対して掘るべき穴を示す(考える方向性を示す)ことも重要な役割です。ここでのポイントは、コピーライターだからコピー、デザイナーだからデザインなど役割や職種に縛られず、フラットに考えてくるように伝えること。

 これは「企画が先、表現は後」で詳しく紹介していますが、最初に持ち寄るべきアイディアは、美しいデザインや面白い映像のコンテといった表現のアイディアではなく、マーケティングの課題をひっくり返し人の感情を動かすための企画(コアアイディア)です。部門の壁を取っ払いフラットに考える環境を作る、ということはまずクリエイティブディレクターがやるべき極めて重要な役割であると考えています。

 つぎに、アイディア出し(ブレスト)のフェーズでは、発言や参加を促す、話の流れを整理する、参加者の認識の一致を確認する、合意形成や相互理解をサポートするといったファシリテイターの役割を務めます。

 たとえば、5人の参加者がそれぞれ5案ずつ持ち寄ったとします。まだまとまりきってはいない玉石混交のアイディアが大量に並べられている状態で、どれを残し磨きあげるかをその場で判断することは容易ではありません。また、1人ひとりの参加者が必死に知恵を絞り出して考えたアイディアを取捨選択するには「なぜその案を選ぶのか/選ばないのか」の明確な理由も必要になってきます。

 そんなとき私は、広角、通常、望遠といった3つのレンズで企画を見るようにしています。「広角」とは広い視座に立ったマクロな視点を意味します。社会的な文脈やニーズにはまっているか、世の中ごととして話題になったり共感につながる可能性はあるか、といった観点です。

 「通常」とは、企画をフラットに見て、マーケティングの課題解決につながるか、人の感情を動かす仕掛けはあるかといった、アイディアの強度を正面からとらえる視点です。「望遠」では、具体的なディテールにふみこみ、実現性はあるか、予算・スケジュールにはまりそうか、などを考えます。このどれかが大きく欠けている案では根本的な見直しが必要となるため、再考するか選ばないという基準を自分の中で設けています。

アイディア出しチェックリスト

  1. 共感性はあるか?(人の感情を動かす仕掛け視点)
  2. 課題解決につながるか?(マーケティング視点)
  3. 自分ならやるか?(行動喚起視点)
  4. ニュースになるか?(PR視点)
  5. シェアしたくなるか?(SNS視点)
  6. 実現可能か?(予算・技術・リソースなど)
  7. 類似はないか?(過去事例との被り・商標など)

 ちなみに、私がホストをつとめるアイディア出しの場では、参加者全員が考えてくることを決めごとにしています。アイディアを一生懸命考えてくる人と、そのアイディアに意見だけを言う人に二分されている状態では、あまり建設的なディスカッションにならないと考えています。また、なにより役職や経験値にかかわらず、ひとつの課題と向き合い掘り下げていく経験をチーム全員で共有することが、ブレストの質を高めることにつながると思っているからです。

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