面白いアイディアの核と、それを生み出すために必要な能力とは

面白いアイディアの核と、それを生み出すために必要な能力とは
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 面白いアイディアがあるのになかなか実現まで至らない。斬新な企画を世の中に打ち出したいけれど何から始めたらいいかわからない。そんな風に考えるクリエイター、マーケターの方に向け、本連載では「面白いアイディア」を実現するためのヒントをお伝えしていきます。第9回は、「面白いアイディアを生むために必要なスキル」をテーマにお届けします。

「面白いアイディア」とは、人の感情を動かす表現や仕掛け

 面白いアイディアがある、だけどなかなかそれが実現しない――。そんな前提に立って、「企画フェーズ」「実現フェーズ」「公開フェーズ」に分けて紹介をしてきました。いま目の前にあるアイディアをなんとしてでも実現させたい、と強く願っているクリエイターやマーケターの方にとって、私自身の経験知が多少なりともお役に立ててていれば嬉しいです。

 では、そもそもどうすれば「面白い」とされるCreative Ideaを生み出すことができるのでしょうか。この問いについて扱っている書籍などはたくさんあるものの、学問として体系的に教わったり、そのスキルを習得したりする場は意外にもほとんどありません。マーケティングや広告領域でのアイディアは、対象となるメディアも広く、またそれぞれのビジネス環境や扱っている商品、サービス、世の中の変化、外部環境などさまざまなものに大きく影響を受けます。そのため、ひとつの雛形のようにフレームワークを体系化することが困難だからかもしれません。

 そんな中でも「アイディアの生み出しかた」として受け継がれてきた、先人たちの知恵が詰まったやりかたは、そのどれもが正解であると思います。自分に合う靴を探すような感覚で、ひとまずその方法をなぞってみて、自分に合うのか合わないのかを判断してみる。要は、自分にとって心地よくアイディアを生みだすことができるなら、そのプロセスはなんだって良いのです。

 そこで今回は、私個人にとってしっくりくるアイディアの考えかたをご紹介していきたいと思います。

 ではまず、「面白いアイディア」と呼んでいるCreative Ideaの核となるものは一体何なのでしょうか。それを私は、人の感情を動かす表現や仕掛け」だと思っています。いうまでもなく、広告表現は何かの課題をクリエイティブの力で解決するためのものです。「人々の認識を変え」、「それによって行動を変える」というゴールに至るためには、まずは感情が動かないと何も起こりません。広告表現においては、誰の感情にも触れず、スルーされることがいちばんの失敗だと思っています。

 私の好きな動画で「The Last da Vinci:The World is Watching」という、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた幻のキリスト画「サルバトール・ムンディ」を初めて目にした人の表情だけを追った作品があります。この絵画は1500年ごろの作品で、長い間行方不明となっていましたが2011年に発見され、2017年11月にクリスティーズで競売に掛けられ、史上最高額の4億5千万ドルで落札されました。

 そんな超がつくほどいわくつきの歴史的な名画を、初めて目にした人々は、どんな感情を抱くのか。この動画の中では、肝心の絵画は一切登場しないのですが、魂を揺さぶられたような恍惚とした表情を浮かべた人々が次々と映し出されます。人の感情を動かすということの究極的な姿が、ここには描かれているように思います。

 Creative Ideaに基づいた表現や仕掛けによって、それに触れた人々の心を「喜び」や「感動」や「驚き」、時には「笑い」や「共感」などによって動かす――。それこそが、ここで「面白いアイディア」と呼んでいるものの本質的な姿です。

 もし、あなたの手掛ける商品やサービスの魅力を、包み隠さずそのまま伝えることで大きな反響を得られるのであれば、広告的な「面白いアイディア」は必要ないかもしれません。一方で、これほどまでに成熟された社会の中では、ストレートに機能的な価値を投げかけても心の琴線に触れずにスルーされてしまうこともあるでしょう。だからこそ私は、人の心を動かす表現や仕掛けが必要だと考えています。

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