「デザインという御輿を僕も担ぎたい」 全員でつくった「CLAY STUDIO」のこだわり
――そんな成果があがっていたなか、2023年5月に東京・南青山に新たな「CLAY STUDIO」をつくった理由をお聞かせください。
新卒や中途採用で加わる人たちからは初代CLAY STUDIOのような場所で働きたいとの声が多かったのですが、メンバーがどんどん増え、スタジオに入りきらなくなっていきました。実はCLAY STUDIOには二代目があり二拠点で活動していた時期もあったのですが、それをひとつに集約しようと近くの物件を探していました。
そんななか、会社の社屋などを取り仕切っている総務部長が「堀切さん、ここの土地を使ってやってみませんか?」と声をかけてもらったのが現在のCLAY STUDIOの土地です。そう言われたときに僕はきょとんとし、なぜこんな良い話をくれるのかと尋ねました。
「総務部ではさまざまな事業部と関わる機会があるけれど、いちばん可能性を感じるのがデザインなんだ」と彼が言ったんです。そして続けて「今、いちばん会社で元気が良くて可能性を感じるから託したい気持ちになる。『デザイン』という御輿を僕も担ぎたいんです」と。この言葉を聞いたとき、こういう人たちに支えられているんだと本当に心が震える思いがしました。
こういった社内メンバーからの支援もあり、今のCLAY STUDIOが出来上がりました。
――具体的にCLAY STUDIOはどのように構想し、作られていったのですか?
まず、自分たちで3Dプリンターを使ってさまざまな模型を作成。はじめは五角形のビルといったデザインも試してみたのですが、僕たちの起点にもなっている初代CLAY STUDIOの雰囲気をここでも再現しようと思いました。
また、CLAY STUDIOはオフィスではなく、あくまで「スタジオ」。そのため安らぎはいらないと考えました。デザイナーのクリエイティブのスイッチが入る場所であるため、第一に考えたのは、スタジオとしてどのようなデザインにするか、どういった機能にするのかといったことです。そのため建物自体も、住居ではなく、図書館などの公共施設やファクトリーのような空間にしたいと思いました。同時に、僕らがデザイナーとしてとてもインスピレーションを受けていた1920年ごろの「バウハウス」時代の、シンプルでそぎ落とされており、かつソリッドな建築にしたいというイメージが湧いてきました。
このスタジオをつくるにあたり、デザイナー全員で、建築、グリーン、インテリア、サイン、キッチン、フロア設計など13のチームを組成。マンホールはオリジナルで部内コンペで決定したものを採用するなど、DIYレベルではなく、ねじひとつに至るまで手を抜かずにこだわりました。
この計画が始まったのは2018年ですが、コロナ禍で進行がストップしていたこともありました。そういった時期を経て、2023年5月にオープン。構想からは4~5年、建物の竣工には1年ほどかかりました。
(後編へつづく)