デザイン制作物は何のために?
企画提案書の基本構成に話を戻します。ここまで「プロジェクト要件」までテーマを進めてきました。プロジェクト要件は状況に応じて、方針レベル、成果レベル、成果物レベルとさまざまな抽象度で記述できるとお伝えしましたが、そのうちの「デザイン制作物まで具体化して示す場合」について補足したいと思います。
百聞は一見にしかず。参考としてデザイン制作物を作り、添付する場合もあるかと思います。ただその場合でも、やみくもに「良いデザイン」を目指すのではなく、企画提案のロジックに沿って制作することが重要です。
「キーパーソン」の意思決定のトリガーは何か。キーパーソンの顕在・潜在ニーズに刺さるものを作らない限りは、制作物を作ることの意義は薄れてしまいます。どれだけデザイナーが複雑な思考と検証を繰り返したアウトプットであっても、ここではあくまで「企画提案書」という意思決定の段取りのなかの世界。キーパーソンの興味の範囲外で制作しても、あまり意味はありません。
制作物の作り過ぎにも要注意です。把握しづらいほどたくさんの数の制作物があると、むしろ相手の仕事を増やすことにもなりかねません。それどころか、こちらの交渉力を下げてしまい、プロジェクトの実行に破綻をきたしてしまうことさえあります。
デザイナーがプロジェクト化したいがために頑張ってたくさん作ってしまう。それによって相手から信頼されたとしても、それは「いっぱい手を動かしてくれる」がゆえのこと。その期待から生まれるプロジェクトは、デザイナーにとって厳しい作業の連続になるかもれません。さらに言うと、自分に続く後進のデザイナーにも、そのような期待と負担を担わせてしまうかもしれません。
キーパーソンの意思決定に響くようなデザイン制作物の条件を精査し、ピンポイントで制作する姿勢を持つことが重要です。
協働を軸とした「プロセス」と「スケジュール」
続いて、企画提案書の基本構成の「プロセス」と「スケジュール」について解説します。
「プロセス」のページでは、プロジェクトの大まかな段取りを記載します。プロセスにおいては、各アクションの目的や因果関係が概観できることが重要です。仮にステップを分けたとして、最初のアウトプット(成果物)は何で、それが次のステップにどう影響するのかを理解できるようにします。
「スケジュール」ページは、プロセスをさらに細かく示します。週ごと、もしくは日ごとにアクションを明示する形式です。多くのデザインプロジェクトは協働の形をとりますので、デザイナーの動きだけを書くのではなく、相手のアクションも定義します。そうすると、相手は意思決定や業務調整がしやすくなり、企画提案書のユーザビリティが向上します。