変わりつつある“距離”の感覚 Faniconの歴史から見える、これからのファンとクリエイターの関係

変わりつつある“距離”の感覚 Faniconの歴史から見える、これからのファンとクリエイターの関係
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2022/11/14 08:00

 なりたい仕事ランキングの上位に「YouTuber」が名を連ねるようになってから久しい。さらに、ここ数年でファンコミュニティを意識したサービスの注目度も上がっており、規模の大小を問わず、オンライン上での創作・発信やその支援はより身近なものとなってきた。そんななか、ファンコミュニティアプリサービス「Fanicon」を2017年から提供するなど、クリエイターやアーティストとファンの関係構築に携わってきたTHECOOが、2021年に常設スタジオ「BLACKBOX³(ブラックボックス)」を、翌年9月には「PEAKS STUDIO(ピークススタジオ)」を立て続けにオープンした。スタジオ増設を機に、同社の代表取締役CEOである平良真人さんと、Fanicon事業部 ビジネス開発チームの寺戸悠樹さんに話を聞いたところ、ファンとの関係における変化が見えてきた。

興味をもったのは「熱量の非対称性」 THECOOとFanicon誕生の経緯

――まずは創業のきっかけと「Fanicon」開発の背景からお聞かせいただけますか?

平良 前職のGoogleで働いていたときに、新しいことを始めようと会社をやめようかと考えていたタイミングで、現COOの下川から「同じタイミングで辞めるのなら一緒にやりませんか?」と声をかけてもらいました。なにを生業とするかはまったく決まっていませんでしたが、彼からの誘いはとても嬉しく、彼となら何か挑戦できると思い会社を始めました。とはいえまずはビジネスとして成立させなければいけなかったため、前職の経験を活かし、旧AdWordsを中心とした運用型広告のコンサルティングから始めました。

2010年の夏には、法人セールス事業の軸にもなっている、YouTuberを活用したインフルエンサーマーケティングも開始。その後2017年に、YouTuberを中心としたファンコミュニティをアップデートする形で、会員制ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」をスタートしました。

THECOO株式会社 代表取締役CEO 平良真人さん
THECOO株式会社 代表取締役CEO 平良真人さん

当時、YouTubeやインフルエンサーマーケティングに関する事業を展開していたこともあり、YouTuberとコミュニケーションをとる機会が自然と増えていました。

あるとき、YouTube Spaceを借りて、クイズや質問大会を行うYouTuberのファンミーティングを開催したことがありました。するとイベント終了後に、YouTuber 5人の前に参加者が40~50人くらいの列をつくり、一生懸命話しかけていたのですが、YouTuberは「いつもありがとうございます」くらいしか言うことができていなかった。ファンの方の1人ひとりのことを知らないので、ある意味当然ですよね。この熱量の非対称性にとても興味をもち、お互いのことを知ってつながる、もしくはファン同士がつながる“コミュニティ”に大きなチャンスがあるかもしれないと気づきました。この延長線上で開発したのがFaniconです。

――寺戸さんのご経歴と現在のご担当業務を教えてください。

寺戸 僕は大学卒業後にCM制作のプロダクションに入社し、10年ほどプロダクションマネージャーやプロデューサーとして勤務していました。退職後は約1年アメリカに留学し、帰ってきたあとに出会ったのがTHECOOです。

新卒のときにCMとウェブサービスのどちらに携わるか迷っていたこともあり、次は初心に帰ってウェブサービスに関わりたいとの思いで転職先を探していました。当時はTHECOOもFaniconもまったく知らなかったのですが、何度か面接を重ねるうちに興味をもち入社しました。

THECOO株式会社 Fanicon事業本部 ビジネス開発部 部長兼スタジオ責任者 寺戸悠樹さん
THECOO株式会社 Fanicon事業本部 ビジネス開発部 部長兼スタジオ責任者 寺戸悠樹さん

Faniconに関わる組織は、Faniconを活用する「アイコン」(アーティストやタレント、インフルエンサーなどを指すFanicon上の呼び名)を新たに発掘するチーム、そのコミュニティをスケールさせるチーム、プロダクト開発チームの3つがあり、私は最初に挙げたアイコンを開拓するチームに所属しています。

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